ARTiSというサークルを作った話
FUN Advent Calendar 2020 Day19です.
クリエイティブコーディングサークル「ARTiS」
artis-creativecodingcircle.github.io
今年度のはじめ,『クリエイティブコーディングサークル「ARTiS」』を設立しました.
公立はこだて未来大学(以下「本学」)では初のクリエイティブコーディングサークルです.
活動目的は「自由な表現の追究と,クリエイティブコーディングの普及」.
所属しているからといって,作品をつくる義務はありません
(どんな活動をしているのかだけ知りたい方は,途中は読み飛ばしてください)
ARTiSは,学びと発信の場を作ります.
ARTiSは,表現のためにプログラムを書きます.
このような場としてのサークルを作ったきっかけに,自分が他のプログラミング言語より長く使っている「Processing」を使った授業と,興味深い本との出会いがあります.
必修授業「情報表現入門」でのProcessing
本学に1年生から在学している学生であれば,必修授業「情報表現入門」で必ずProcessingに触れているはずです.
以下,今年度シラバスp.55「情報表現入門」から引用.
https://www.fun.ac.jp/wp-content/uploads/2020/04/2020_syllabus.pdf
情報表現のために必要な「対象の観察・分析・様式化・再構築のプロセス」と「プログラミング言語記述能力の基礎」をアプリケーションの作成を通して学ぶ.
(中略)
表現関連テーマとしては,データが持つ情報属性を理解し,それらを効果的に可視化する方法を学び,プログラミング関連テーマとしては,手続き型言語に関する基本概念の理解,アニメーション,初歩的な対話処理を学ぶ.
デジタルアート(プログラムアート)としての表現については授業の主題ではなく,関連する情報に触れるには,授業外で本などの資料を漁ることが必要です.
情報表現入門の課題では,例年「ブロック崩し」「スケジューラ」などのシステムを作ります(今年度は少し違ったようですが).
入り口がシンプルな言語ながら様々な機能を実現できるため,プログラミング初学者に適した課題だと思います.
ただ,システムを作るには,他の言語で作った方が便利かつプラットフォーム利用者が多い場合があります(例えば,モバイルアプリなど).
大抵の学生は違うプログラミング言語に流れていきます.
全員が触れているはずなのに,授業が終わってからProcessingを使い続ける人は数えるほどしかいませんでした(自分が把握している限り).
自分も「もうProcessingに触れることはないだろう」と思っていましたが,大学で見つけた本の影響を受けます.
ジェネラティブ・アートを知る
「ジェネラティブ・アート Processingによる実践ガイド」という本を見つけました.
公式サイト内の解説文を引用します.
アーティスト/デザイナーのためのプログラミング環境「Processing」を使って、美しく予測不可能な「ジェネラティブ・アート」をスケッチするための解説書。
(中略)
本書は、そのProcessingを利用して、「ジェネラティブ・アート」と呼ばれる生成的な視覚表現を作るためのわかりやすい手引き書です。
この本1冊を通じて,予測不可能性を含めたアルゴリズムによる視覚表現に惹かれました.
そこから少し時間が開いたものの,時々Processingを使った投稿をするようになります.
Processingでカンタンモザイクアート pic.twitter.com/0j7a4fz5Ts
— ohayota (@ohayoooota) January 10, 2019
こっちの方が鼓動っぽくなったと思う pic.twitter.com/0ZNNav9XB9
— ohayota (@ohayoooota) January 16, 2019
国内のProcessingコミュニティ
自分が学んでいたSwiftに関連するイベントには,Try! SwiftやiOSDCなどのカンファレンスがあります.
Processingにも,Processing Community Dayというイベントが1年に1度ありました.
Processingのカンファレンスのような感じかと思います.
現地に行くことは日程の都合上できませんでしたが,YouTubeでの配信もありました.
イベントを見て,表現のためのプログラミングを楽しむ人が,思っていた以上に多いことを知りました.
Processingを楽しむ人のコミュニティは,学外にありました.
自分が個人でコミュニティに参加することに,抵抗はありませんでした.
ただ,学内で同じような興味を持ってくれる人を増やすことには繋がりづらい.
本学の他の学生にアプローチすることは,個人としては難しいと思いました.
個人としてではなく,一つの小さなコミュニティ(学内のサークル)から,学外のコミュニティにアプローチしたいと思いました.
これなら新入生にも知ってもらえると思いました.
サークルを作る
このような考えから,まずはうっすらと興味を持っている学生を探しました.
メンバーを集めるきっかけは,一つのツイートでした.
プログラムで絵を描くサークル作りたいな
— ohayota@FunLocksメンター (@ohayoooota) January 10, 2020
需要なんて聞いたことないけど
このツイートに反応した人に声を掛けました.
探した限りでは,近いことをやっていそうなサークルは学内にありませんでした(正確には,情報にアクセスする手段がほとんど見つからない上に,活動があまり活発には見えなかった).
だからARTiSを作りました.
https://artis-creativecodingcircle.github.io/
サークル名「ARTiS」の由来となった言葉は,「ART is 〇〇.」です.
ARTiSでは,やりたい表現を自由に学びながら実践していきます.
作って終わりではなく,発信もします.
現に,Twitterなどを利用したコミュニティで作品を発信しています.
t=0;draw=_=>{if(!t++)createCanvas(w=1080,w);colorMode(HSB);translate(540,540);for(x=-w;x++<w*2;){a=noise*1}}#つぶやきProcessing pic.twitter.com/24kUXGawy1
— ohayota@FunLocksメンター (@ohayoooota) September 12, 2020
ARTiSの活動
設立してから,サークル単独の活動や,コミュニティと関わる活動をしてきました.
ARTiSの活動については,Twitterのハッシュタグ「#ARTiS_Activity」で見ることができます.
主にこんな感じの活動をしていました.
- 2020年度サークルカット制作(〜2020.2,制作1名)
- ロゴ制作(〜2020.3,初期メンバー7名)
- オンライン新入生勧誘(2020.4)
- ワークショップ(2020.4〜)
- PCJ ZINE vol.0への寄稿(2020.5,執筆4名)
- クリエイティブコーディング作品展 #01(準備2020.7〜2020.9,展示2020.9,出展7名)
- PCJ ZINE vol.1への寄稿(2020.9,執筆3名)
- 部誌制作(2020.11〜)
2020年度サークルカット制作(〜2020.2,制作1名)
サークルカットは,新入生勧誘冊子に載せるために制作したものです.
4月の新入生勧誘中止により冊子に使われることはありませんでしたが,TwitterのヘッダーやARTiS公式サイトのヘッダー(背景)になっています.
Processingと,ライブラリ「joons-renderer」をガラスや金属をレンダリングするために使用しています.
ロゴ制作(〜2020.3,初期メンバー7名)
設立時にロゴを制作しました.
グラフィックと組み合わせた時に,グラフィックの邪魔をしないようなロゴタイプにしました.
使われているフォントの名前「Avenir」は,フランス語で「未来」を表します.
「iS」の部分に使われているターコイズという色は,「自由」「創造」といった意味を持つそうです(諸説ありますが).
「ART is 〇〇.」の「is」の先を自由に創るという意味を持たせています.
プロトタイプ作成から書き出しまで,すべてProcessingで完結しました.
オンライン新入生勧誘(2020.4)
大学側から,Zoomでオンラインサークル勧誘の場が設けられました.
30分が割り当てられ,前半はサークルについて説明し,後半は簡単なコードでライブコーディングしました.
5名ほど,興味を持ってくれた新入生が連絡してくれました.
月曜、ARTiS( @ARTiS_CCC )のサークル勧誘中にライブコーディングでみせたやつ
— ohayota@FunLocksメンター (@ohayoooota) April 22, 2020
思ったより反応がよかった#creativecoding #generativeart #processing pic.twitter.com/oxcHGsnVkx
ワークショップ(2020.4〜)
本日13時、Workshop#5 “Renderer”を開催します!#ARTiS_activity pic.twitter.com/mvqcKzT7En
— ARTiS (@ARTiS_CCC) June 7, 2020
60〜90分で特定のテーマについて学び,不明点をリアルタイムで聞きながら作品を1つ作ることを目指します.
タイムアタックみたいな感じでもありますね.
過去に,不定期で8回開催しています.
- Workshop#1 "Random"
- Workshop#2 "Noise"
- Workshop#3 "Object"
- Workshop#4 "Image"
- Workshop#5 "Renderer"
- Workshop#6 "Color"
- Workshop#7 "Recursive"
- Workshop#8 "Attractor"
部員がつくった作品は,Twitterのハッシュタグ「#ARTiS_Workshop」から見ることができます.
イベントのバナーをどのように作ったかについては,Qiitaで執筆した記事に書いています.
Processing Advent Calendar 2020 Day12の記事です.
ついでにProcessing Advent Calendarの記事も漁ってみると面白いと思います.
PCJ ZINE vol.0への寄稿(2020.5,執筆4名)
ワークショップを4回開いたことについて書いています.
【告知】
— ayato (@dn0t_) June 15, 2020
PCJ ZINE vol.0公開しました。
創刊号のテーマは「わたしの #dailycoding」
計26名のクリエイターさんにご参加いただいております。表紙は @ohayoooota さんの作品。
こちらpdf無料配布のみです。お気軽にDLしてみてください。https://t.co/DJs3p2cvkA
#processing #p5js #booth_pm pic.twitter.com/2F6jGZu6pT
クリエイティブコーディング作品展 #01(準備2020.7〜2020.9,展示2020.9,出展7名)
リアルでの展示ができないため,作品展はオンライン開催としました.
7名で24作品の展示で,展示期間中の来場者数は約300名となりました.
9/17-9/30の期間で、ARTiS初のオンライン作品展開催!
— ARTiS (@ARTiS_CCC) September 17, 2020
会場は3つのプラットフォーム。
Mozilla Hubs:https://t.co/4oWXhBIx58
STYLY (1/2):https://t.co/NqGUxepTiF
STYLY (2/2):https://t.co/K7jFFXC1Ig
GitHub Pages:https://t.co/LjBZuIB691
PCのWebブラウザでご覧ください!(続)#ARTiS_Activity pic.twitter.com/HD2CIaDUy0
初回である本作品展では,プラットフォームによって可能な展示方法を見るために,展示会場に3つのプラットフォームを利用しています.
中間試験と準備期間が丸被りしている中,特に展示会場準備班には非常にお世話になりました(土下座).
来場者から工夫についての意見をいただくこともできました.
PCJ ZINE vol.1への寄稿(2020.9,執筆3名)
クリエイティブコーディング作品展 #01について書いています.
【告知】
— ayato (@dn0t_) September 26, 2020
PCJ ZINE vol.1公開しました。
メインテーマは「#つぶやきProcessing」
計13名のクリエイターさんにご参加いただいております。表紙は@Hau_kunさんの作品です。
こちらpdfでの無料配布です。お気軽にDLして御覧ください。https://t.co/9HsQPxbQgp#processing #p5js #booth_pm @PCD_Tokyo pic.twitter.com/Z4p0U94H65
部誌制作(2020.11〜現在)
今年の活動をアーカイブするために,部誌を制作しています.
年明けの発行を目指し,絶賛執筆中です.
余談
ロゴなどをなるべくProcessingで完結しようとしているのは,サークルのある方針に基づくものです.
Slackで発令したAdobe製品禁止令です(別に嫌いなわけじゃなくて,自分はAdobeCCめちゃくちゃお世話になってます).
せっかくProcessingが使えるんだったら,とことんProcessingを使い倒そうという意図でした.
なお,発令してから半年で,代表(自分)が自ら破っています.おい.
今年度の振り返りと来年度のあり方
今年度は最初からオンラインでの活動になりました.
その影響で,対面で話したことがないメンバーが半分います.
最近の状況を見る限りは,来年度もオンライン中心の活動が続くことでしょう.
オンライン中心ということは場所の制約がないというメリットがあります.
オンライン作品展のように,現地開催としていたら来場者が限定されていたことを考えると,現状のスタイルも悪く無いとは思います.
(それでも,同じサークルに所属するメンバーで集まれないのは少し寂しい)
来年度もサークルを続けていきます.
システムを作るためだけのプログラミングだけでなく,表現のためのプログラミングを徐々に広げていきたいと思います.
メンバーの忙しさが少し落ち着いたタイミングで,2回目の作品展を開きたいですね.
まずは,来月の部誌の完成を目指します.
発行されたら,是非読んでみてください!
表現のためのプログラミングに興味を持つ人が増えますように.